2012年12月
平成24年も早くも師走を迎えました。
師走は先生(師)も走り回るほど忙しい、の例え通り、忙しさが募る時です。また、年末は忘年会などで飲み食いする場が増えますので、余計体調管理が必要な時です。
くれぐれもご自愛くださいますように・・・。
さて、今月のよもやま話はこれから多くなる年末年始の酒の健康管理、つまり酒毒の漢方的対応について記していくことといたしましょう。
酒は百薬の長と言われるように、この上なく良いものとされますが、問題はついつい飲みすぎることです。
また、晩酌などのように、毎日飲むというくせをつくることです。
このように「度を越す」ことと「くせをつくる」ことに対し、何か良い手立てはないのでしょうか。
中国漢方医学では酒毒を次のように考え、酒家(酒呑み)に警告を与えています。
つまり、酒を飲みすぎるということは、脾胃の機能を弱め、脾・胃及び肝胆の部に湿邪、熱邪の停滞をつくると考えているのです。
ですから、毎日飲むとか、一度に多量に飲むとかを繰り返すようになると、絶えず湿熱の邪気が消えないことになり、一方、体全体では体に有用な津液不足(陰虚)傾向をつくり、また、血液もドロドロになる?血傾向をつくるのです。
因みに酒の漢方的食性は「湿性」と「熱性」です。
このような湿熱邪をつくり、津液不足、オ血をつくる飲酒に対して、中国医学では「茵チン五苓散(いんちんごれいさん)」という処方をよく使います。
つまり、茵チン五苓散(いんちんごれいさん)の処方中の茵チン蒿(いんちんこう)が熱邪をさまし、茯苓(ぶくりょう)、猪苓(ちょれい)などが湿邪を解消してくれるからです。
そして同じような意味で竹茹温胆湯(ちくじょうんたんとう)などを使うこともあります。ともかく酒好きの方は、このような漢方処方で、少しでも酒毒の溜りを解消しておくことをおすすめします。
そのような対処法をしないで、漫然と飲み続けていくと、肝臓疾患、膵臓疾患などを起こすようになりやすいです。
それでは次に中国医学が教える酒の飲み方について記してみましょう。
酒の上手な飲み方
1.少飲(少量飲む)
2.淡飲
(話をしながら飲む、という意味も多少あるが、アルコール度の低い酒を小さなグラスで長く時間をかけて飲む)
が基本で、暴飲多飲と避け、何種類も飲まない。
タバコを吸いながら飲まない。
そして飲んだあとは風呂に入らない。
などが注意事項です。
このような事に注意し、楽しく酒を飲み、酒毒を溜めないようにしましょう。
最後に寒くなると心配になるのが、脳血管疾患や心臓病です。
中国医学でいうと、これ等疾患は
1.肝陽上亢型(かんようじょうこうがた)
2.肝腎陰虚型(かんじんいんきょがた)
3.気滞血オ型(きたいけつおがた)
4.痰オ互阻型(たんおごそがた)
等に分類され、治療法が考えられます。
このような型に対し、どのような漢方薬が使われるかといいますと、
1.肝陽上亢型(かんようじょうこうがた)
・・・釣藤散(ちょうとうさん)、降圧丸(こうあつがん)、柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)
2.肝腎陰虚型(かんじんいんきょがた)
・・・杞菊地黄丸(こぎくじおうがん)+降圧丸(こうあつがん)
3.気滞血オ型(きたいけつおがた)
・・・冠元顆粒(かんげんかりゅう)、血府逐オ丸(けっぷちくおがん)、通導散(つうどうさん)
4.痰オ互阻型(たんおごそがた)
・・・大柴胡湯(だいさいことう)、防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)+冠元顆粒又は血府逐オ丸
ともかく、脳血管疾患や心臓疾患は予防が大切ですので、心配な型は私共にご相談ください。
それでは良いお年を、お元気で越年ください。
店主(北京中医薬大学日本校卒業)